第27回日本接触皮膚炎学会速報

11月30日、12月1日に東京の京王プラザで第27回日本接触皮膚炎学会が開催されました。 シックハウス研究会議と重複したのですが、出席できたごく一部を速報としてご紹介します。

イブニングセミナー「Eyelid Dermatitis-その多彩な原因と合理的対策」

中山秀夫(中山皮膚科クリニック)

抄録

 眼瞼に皮膚炎を繰り返し、ステロイド軟膏を塗ればよくなるが、やめれば再発という症例が多い。掻いたり、叩いたりして網膜剥離から視力障害になる症例はアトピー性皮膚炎でよく知られており、本症の背景因子、原因アレルゲン、刺激原をよく理解し、対処することが望まれる。多数例で原因を分析すると、化粧品、金属、点眼液で眼瞼に触れるもののアレルギーの他に、手で触れたものの眼瞼への接触でおこるアレルギー、花粉、ペット、ダニなどの結膜アレルギーとからんだ皮膚炎、落ちにくいマスカラのremoverの刺激など多岐にわたるのが特徴といえる。

コメント

最近、落ちにくい化粧品による接触皮膚炎が増加傾向にあること。ブルースター(白、ピンクなどもある)という新しい花による接触皮膚炎がみられたこと。接触原が皮膚に直接ではなく、手を介して間接的に接触する例を、「indirect contact dermatitis」(仮称), 眼のまわりのステロイド皮膚症を、「periorbital dermatitis」という用語が示されたこと。 眼周囲の皮膚炎のアレルゲンとしては、

  1. 化粧品、
  2. ニッケル、コバルト
  3. ダニ
  4. 点眼剤
  5. 香料
  6. Pollen
  7. クロム
  8. PAN
  9. ヘアダイ
  10. レゾルシン

の順位であったと報告された。

その他

シンポジウムII、「アレルギー性と刺激性との鑑別」は、日常診療で皮膚炎の診断やパッチテストの判定のときに、悩ましいことであるので、興味深いことであったが、金属パッチテスト判定は、48時間と1週間の2回をみること(従来の72時間、96時間では不十分)。疑陽性例は、再パッチテストをして確認すること。金属アレルギーのリンパ球幼弱試験は、研究が進んだものの、まだ確立した信頼度の高い検査ではないこと(自費8000円が必要)。金属アレルギーのパッチテストの判定は難しい。などが記憶に残り勉強になった。しかし、依然としてパッチテスト疑陽性例の解釈と判断については、今後の研究課題となった。

シンポジストの講演では、金属内服誘発テストの危険性や実施困難の理由を挙げて否定的な見解であったが、須貝先生は、金属内服誘発テストが、金属アレルギーの診断に有用であり効果をあげている。欧米では濃度や投与量について確立しているのに、なぜ実施しないのかとの発言があった。座長の神崎先生(鹿児島大学皮膚科教授)も金属投与量は、普通の食事の1週間分にしかならず安全であり、私も実施しているとのコメントであった。小塚先生からも金属アレルギーのリンパ球幼弱試験について有意義な質問があり論議された。

(注)記事内表記は全て掲載当時のものです。