インフルエンザの診断と治療について
大阪在住の某内科開業しておられる先生からのインフルエンザに関する情報です。 参考になるかと考え許可を得て掲載させていただきました。(掲載責任 笹川)
診断について
インフルエンザ抗原の迅速診断検査キットには2種類あります。
1:ディレクティジェンFLU-A
昨年発売された初の迅速診断キットです。A型のみを引っ掛けます。 B型は出ません。発病初日に陰性で翌日再度検査したら陽性ということが時々あるようです。
2:インフルエンザOIA
AB両方とも引っ掛けますが、ABどちらかの区別は出来ません。この両方とも、鼻腔吸引液又は、鼻腔拭い液で検査をします。咽頭からは感度が 落ちます。鼻の奥まで綿棒を突っ込んで検体を取りますので、少し痛いです。大人でも結構痛がります。鼻出血を起こすこともあります。検査時間は約20分程度、検査はかなりのステップがあり、結構手間です。検査時間中は看護婦一人が ほぼそれにかかりきりになります。幾つかのMLでのはなしからすると、感度及び特異性は共に満足すべきもののようです。来年には、ABの区別が出来るキットが発売されるということのようですが、まだはっきりしません。
治療薬について
治療薬は3種類あります。
1:アマンタジン(シンメトレル)
皆さんご存知の抗パーキンソン薬です。A型のみに効きます。Bには全く効きません。Aには劇的に効きます。1~2回飲むだけで、解熱することが多いようです。ただし、そこで服用を止めると再燃します。発症後48時間以内に投与開始するとなっていますが、実際には、もう少し遅く開始しても十分効くようです。問題は、元々、中枢神経系に作用機序を有しますので、興奮や多動などの副作用があり、特に小児では、けいれんを引き起こすといわれています。特に喘息に使うテオドールとの併用が危ないとか・・・(?)。
もう一つの問題は、非常に耐性化しやすいということです。シンメトレルを服用開始して3~5日で、1/3が耐性化するという報告があります。耐性化したウイルスも感染力を持つので、発端者にシンメトレルを飲ませると後から罹ったその家族にはもう効かないと言う先生もおられます。この2点が問題で、小児にはかえって使い難いものとなっています。でも、昨年はこれしかなかったので、結構使いました。実際に当院でも、興奮が出たケースが数例ありました。
2:ザナミビル(リレンザ)
AB共に有効。唯一の吸入薬です。喘息に使うフルタイドの器具を使います。器具を水平に保って粉を自力で吸い込む必要があります。練習必要。教える手かが大変です。それで当院では採用していません。結構むせます。小さい子供には無理です。副作用は少ない。
3:オセルタミビル(タミフル)
AB共に有効。リレンザの改良型。飲み薬にしたもの。これも副作用は、プラセボと比べて少なかったとのことで、非常に少ないというのが売りです。でもこの2と3は、この2月2日から保険収載されたばかりで、実際にどれ位効くか、副作用はどのようなものがあるか、まだ判っていません。また2・3共に、小児への保険適応はありません。耐性化はないという事になっているようです。もう一つのポイントは、作用機序から言って発症後48時間以内に投与開始せねばならないということです。また5日間の投与期間が必要です。途中で止めると再燃するとMRは言っています。
しかし、タミフルは、小児用細粒が来年には保険が通るといわれています。海外のデータでは、1歳から12歳までの安全性と有効性が証明されたデータがあるということです。(この部分はMRの受け売り)で、これは、カプセルですので、開いて粉を分ければ、子供にも出せなくはありません。ただし、苦いですが。僕としても、タミフルを何歳まで処方してよいか悩んでいるところです。ちなみにこれは結構高いので、院内処方での205円ルールからはみ出します。レセに名前が載ってしまうということです。小児にとっての、現時点での最良の選択は、おそらく、このタミフルという事になるのでしょうが、・・・。小児科医としては、この小児用細粒が早く保険を通ることを望んでいます。
現状では、大阪ではもう流行の主体が急速にBになってきているようですので、ディレクティジェン+シンメトレルの組み合わせはほとんど意味がなくなってきていると考えます。従って、当院では、いずれにしても今のところ、インフルエンザを疑ったら、OIA+タミフルでやってます。OIA陽性の場合には、大人で発症48時間以内ならば、タミフルを5日間投与するということでやっています。この場合には、抗生剤は出しません。小児でも、ある程度大きい子だとタミフルを出していますが、これはまだ1~2例のみです。
今年は、非常に例外的な年で、インフルエンザの季節にこんなに暇だったことは僕の記憶にはありません。というわけで診察時間中にもかかわらず、のんびりとメールを書いて居れるという事です。長文をここまで読んでいただいた方には感謝します。
文責:DRサッサー